経鼻内視鏡検査が生まれた歴史
胃カメラ検査は口から内視鏡を挿入する経口内視鏡と、鼻から挿入する経鼻内視鏡に分けられます。
こちらでは、内視鏡検査全体の歴史から経鼻内視鏡検査が生まれた背景についてお話します。
経口内視鏡の誕生
現在では経口内視鏡と経鼻内視鏡が胃カメラ検査の方法として確立されています。先に医療現場に導入されたのは、1950年代にスタートした経口内視鏡です。胃カメラの本格的な開発はそれ以前から、日本で行われていました。
当時の経口内視鏡は、現在の内視鏡と比較すると大幅に太く、被験者に大きなストレスを強いる装置でした。また、機能面についても豆電球による照射、カメラによる写真撮影のみと最低限しか備わっていませんでした。現在の経口内視鏡は、度重なる改良を経て細くなり、そして機能追加されていったということになります。
内視鏡はライトやレンズ、空気や水が通過する穴など複数の要素によって構成されています。従来は、これらを内視鏡としてひとつのチューブにまとめるためにはある程度の太さが求められました。それぞれの構成要素に対する技術革新が、経口内視鏡のサイズダウンに貢献したのです。
この革新は、後の経鼻内視鏡の誕生につながっています。
経鼻内視鏡が始まった背景
上述したとおり、内視鏡の始まりは経口内視鏡です。
このことから、従来は「胃カメラは口から挿入するもの」というイメージが一般的でした。開発技術の進歩から内視鏡のチューブは当初と比較すると大幅に細くなっていきましたが、そこから鼻から入れる経鼻内視鏡が求められるようになったのはなぜなのでしょうか?
その最もたる理由は経口内視鏡によって生じる「嘔吐反射」にあります。口から挿入して胃に到達させるというルートの都合状、経口内視鏡では舌の根元にチューブが触れます。このことによる生じる異物感は、被験者にとって大きなストレスとなる嘔吐反射につながるのです。
のど奥に指を挿入すると「オエー」「ゲー」と吐き出したくなる感覚に襲われるはずです。経口内視鏡では、チューブの挿入中は常にこの嘔吐反射の感覚に苛まれることになります。時には挿入が困難になってしまうことも少なくありません。
一方、経鼻内視鏡ではルートの関係上、チューブが舌の根元に最低限しか触れません。そのため、生じる嘔吐反射は経口内視鏡に比べて軽微です。
こうした背景から経鼻内視鏡はストレスが少ない胃カメラの方法として普及していきました。
経口内視鏡・経鼻内視鏡が併用される時代へ
上述したように嘔吐反射が少ない経鼻内視鏡ですが、経口内視鏡にはない欠点も有しています。鼻の穴の形状、内部の広さは人によって違いがあります。チューブを鼻内部に粘膜の摩擦は、出血や傷みの原因です。
現在は、経口内視鏡・経鼻内視鏡それぞれのメリットとデメリットから、両者が医師の判断に応じて併用されています。経口内視鏡を実施する際はのどに、経鼻内視鏡を実施する際は鼻の粘膜に麻酔が使用されます。鼻に麻酔を行う際は痛みの軽減と同時に出血を防止するため、血管収縮剤を含有している麻酔剤を使用するのが一般的です。
ケーブルのサイズダウン、麻酔技術の発展、また施術する医師の技術向上により、胃カメラで患者様が感じるストレスは内視鏡医療が始まった1950年代よりも大幅に軽減しています。
今後は、さらに負荷の少ない内視鏡検査が実現されるかもしれません。